日本のゴミ処理場※1は、残り20年で容量が限界を超えてしまうと予測されています。
高度経済成長期からの大量のゴミ消費や高度経済成長期からの大量のゴミ消費が、深刻なゴミ問題を引き起こしているのです。
ゴミ処理場の不足が解決しなければ、ゴミを捨てる場所の制限、処理費用の高騰など、私たちの生活に大きく影響します。
そこで本記事では、
- ゴミ処理場の不足が私たちの生活にどう影響するか
- ゴミ処理場不足の解決策
などについて解説します。
ぜひ最後まで読んで、ゴミの問題について一緒に考えてみましょう。
※1 ゴミ処理場(埋め立て地):本記事では「ゴミを処理する過程で資源化できないゴミを埋める場所」と定義します。
目次
ゴミ処理場はあと20年で満杯になる
環境省の調査によると、ゴミ処理場(埋め立て地)は約21. 4年で満杯になると予測されています。
これは、東京ドーム約80.25個分の容量に相当します。
言い換えれば、今年生まれた赤ちゃんが20歳になるころには、ゴミを埋める場所がなくなる可能性があるのです。
実は、ゴミ処理場が不足する問題は、1980年代から続いています。
法律による規制やリサイクル活動の促進、ゴミ処理の有料化などによって、改善を試みてはいますが、いまだ不十分な状況です。
ゴミ処理場を満杯にさせないためには、環境問題を2030年までに世界中で解決するための取り組み「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」やエコ活動が非常に重要です。
ゴミ処理場はなぜ足りないのか
ゴミ処理場が足りない理由は2つあり、どちらも生活の便利さと多様化に関係しています。
生活が便利になるほど、ゴミの処理や処理場の確保が難しくなるのです。
理由①高度経済成長にともなうゴミの増加
日本は、戦後の1960年代から1970年代にかけて高度経済成長期を迎えます。経済が飛躍的に良くなり、あらゆる産業技術が発展し、私たちの生活は大きく変わりました。
具体的な変化は、以下の2つです。
①生活が便利になった
国民の所得が増加したと同時にスーパーマーケットやコンビニエンスストアが次々と登場しました。
家事を時短できる物品や手軽に食べられる食品など、忙しい私たちのニーズに応える商品が普及したのです。
②生産活動が活発化した
家電製品や生活を便利にする道具などが多く生産され、製造業から排出される産業廃棄物も増加しました。
これらの生活の変化は、大量生産と大量消費のサイクルを生み出しました。
また、処理費用を抑えようとした一部の事業者が、不適切な処理業者に委託したり、不法投棄したりしたため、環境問題が悪化したのです。
生活が便利になり多様化する一方で、ゴミの急増により、ゴミ処理場は限界を迎えようとしています。
理由②焼却処理施設のひっ迫が拍車をかけている
生活の多様化によるゴミの増加に対応するためには、ゴミを焼却するための新たな施設が必要です。
なぜなら、ゴミは焼却されないと資源化されず、そのまま埋め立て地に埋められるからです。
焼却処理でゴミの容量を減らし、資源化できるものを除けば、埋め立てする量も減らせます。
しかし、焼却施設の建設は、土地の確保と周辺住民の理解が不可欠で、容易ではありません。
適切な土地の確保
ゴミ処理場の建設には広大な土地が必要です。これは、建設に伴う以下のリスクに対応するためです。
- 有害物質の漏洩
- 自然災害による被害
- 悪臭
- 火災
こうしたリスクを防ぐために、壁や監視装置を設置するなどの対策が行われています。
よって、ゴミ処理場の建設には、人口が少なく広大な土地を確保できる場所が必要です。
周辺住民の理解
埋め立て処理を減らすために、焼却処理の施設が必要ですが、ゴミを運ぶトラックや悪臭、煙を排出する煙突などのイメージがあるゴミ処理場への理解は課題の1つです。
ゴミ処理場の必要性が理解できても、自分の住む地域にゴミ処理場があると、
・健康状態への悪影響
・農作物の成長阻害や汚染
・河川や動物への汚染
などが心配で、不安を抱く人も少なくありません。
事実、ゴミは人体や環境に直接影響を与えるため、厳しい基準が設けられていますが、住民の理解を得るには時間がかかります。
いずれにしても、多様化した生活の中でゴミが増え続けることによる焼却処理施設のひっ迫が、埋め立て地の許容オーバーに拍車をかけています。
ゴミ処理場が足りなくなるとどうなる?
では、ゴミ処理場が満杯を迎えたとき、私たちの生活にはどのような影響が出るのでしょうか。
ゴミ処理場が足りなくなった場合に起こりうる3つの影響を解説します。
ゴミを捨てられる場所がなくなる
ゴミ処理場が満杯になれば、埋め立て地が利用できなくなり、ゴミを安全に捨てられる場所が減少します。
これにより、たとえば燃えるゴミの日が週2回から週1回になる可能性があります。資源化できず埋め立てられるガラスや陶器の回収も、月1回から半年に1回程度に減るかもしれません。
また、各ゴミステーションの一部が撤去され、捨てる場所が制限されることも考えられます。
不法投棄、環境汚染のリスクが高まる
ゴミを適切に処分できる場所が減少すると、無断でゴミ集積所に放置したり、人目につかない場所に捨てたりする不法投棄が増える可能性があります。
こうした不法投棄から有害物質が漏れ出し、河川や土壌に汚染が広がると、魚や動物への影響が出るだけでなく、人々の健康にもリスクが及ぶ恐れがあります。
ゴミを捨てるためのお金がかかる
地域のゴミ処理場が不足すると、ゴミを他の地域の処分場まで運ぶ必要が生じ、その分の運搬コストがかさみます。
ゴミ処分にかかるコストは地域住民の税金が使われているので、運搬コストの増加により、ゴミ袋代や粗大ゴミの処理料金の値上がりなどで税負担が増えるでしょう。
たとえば、人口約28万人の千葉県市原市の場合、現在のゴミ処理費用は年間約28億円ですが、処理場が不足すると1人あたりの年間負担額がさらに1万円以上増え、月に1,000円以上増加する場合も考えられます。このように、問題が放置されると、
・雨不足で作物が育たず食料価格が上がる
・飲酒やながら運転による事故が増えて道路交通法が厳しくなる
といった他の社会問題同様、私たちの生活にも経済的な負担として直接跳ね返ってくるでしょう。
ゴミ処理場不足問題の解決の鍵は「リデュース」
リデュースとは、ゴミを減らし、ゴミの捨て方や使い方を見直す取り組み(3R)の1つです。
環境負荷の抑制に効果があるリデュースは、SDGs、エコ、サスティナビリティの観点からも注目されています。
環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度実績)について」によると、産業廃棄物の最終処分量は、前年度に比べて2.9パーセント減少し、909万トンから883万トンになりました。
これは、リサイクル技術の向上や分別意識の高まりによって、ゴミの減量とリサイクル率の向上が進んだ成果とも言えます。
ゴミの量が減れば埋め立て地の寿命が伸び、ゴミ処理場が足りない問題の解決にも有効です。
SDGsの取り組みが、ゴミ問題の根底にある「最終処分場のひっ迫」にもつながっていることを知っておきましょう。
リデュースでゴミ処理場の不足解消とSDGsに貢献しよう
リデュースは誰もが簡単に実践できるので、まずは1つ、今日から始めてみましょう。リデュースの意識を持つと、SDGsへの貢献も果たせます。
社会の課題解決のために作られたSDGsは、環境や生活を守るために行う活動を目標として掲げています。
たとえば、以下の目標が挙げられます。
- 目標12「つくる責任つかう責任」
- 目標13「気候変動に具体的な対策を」
- 目標14「海の豊かさを守ろう」
この3つはゴミ処理場の不足問題、リデュースにも関係ある目標です。
今後もきれいで快適な日本で暮らせるように、
- 捨てるものを増やさない
- 長く大切に使う
- 持っているもので代替できないか考える
などのリデュースの意識を持ち、一緒にゴミ処理場不足の問題に向き合いましょう。
なお、当コラムでは、リデュースの実践例を解説していますので、ぜひご覧ください。