企業で廃棄物を管理する担当者になるとマニフェスト制度の知識が必要不可欠です。
マニフェストとは産業廃棄物の流れを管理する制度で紙と電子の2種類がありますが、そもそもマニフェストとは一体何だろうか、どのようにして運用するのだろうと疑問に思う方もいるでしょう。
また、産業廃棄物管理業務の仕組みやシステム導入の検討を任された方であれば、実務経験がないためなおさらです。
本記事では産業廃棄物に必要なマニフェストについて分かりやすく丁寧に解説しますので、マニフェストの知識を習得することができます。
ぜひ、本記事を読んで今後の廃棄物管理業務に活かしてください。
目次
マニフェストとは産業廃棄物を追跡管理する制度
産業廃棄物の法律である廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)では、”排出事業者責任”を大原則としています。
そして排出事業者責任は、産業廃棄物を排出する際「誰が・いつ・どのくらい・どのように取り扱ったか」を把握する義務があります。
これは、不法投棄や適正ではない処理を未然に防ぐことが目的です。
マニフェストはこの「誰が・いつ・どのくらい・どのように取り扱ったか」産業廃棄物の流れを追跡し管理するツールとして、収集運搬・処分を他社に委託する排出事業者が対応しなければならない制度です。
参照:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)|電子マニフェストとは|マニフェスト制度とは
電子マニフェストとは紙マニフェストの電子版
電子マニフェストとは、いわゆる紙マニフェストの電子版です。
マニフェスト用紙に記入する情報をJWNET(ジェイダブリューネット)と呼ばれる電子マニフェストシステム内に入力することで、対象産業廃棄物に関わる排出事業者、収集運搬業者、処分業者の3者がシステム内で産業廃棄物を追跡・管理できるようになっています。
3者が加入する必要があるためハードルは少し高いですが、後述する自治体への実績報告や産業廃棄物の数量管理(帳簿記入)などの事務作業負担を減らすことができるシステムです。
参照:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)|電子マニフェストとは|マニフェスト制度とは
産業廃棄物を管理するマニフェストにある3つの義務
産業廃棄物の取り扱いには排出事業者責任、契約締結のほか車両に産業廃棄物を運搬する旨の表示義務などさまざまな義務がありますが、マニフェストも例外ではありません。
交付の義務(マニフェストの交付義務)
マニフェストは産業廃棄物を追跡し管理するツールとお伝えしましたが、産業廃棄物の流れを把握するために1回の排出毎に交付することが決められています。
報告の義務(実績の報告)
事業者が1年間にどれだけの産業廃棄物を取り扱ったか各自治体に報告する義務のことです。
これは、各自治体が地域内にどれくらいの産業廃棄物が運ばれ処理されているかを把握する目的もあります。
①産業廃棄物収集運搬業実績報告書・処分実績報告書
【対象】4月1日~翌年3月31までに取り扱った全産業廃棄物
【報告方法】各自治体の指定様式に種類毎、排出事業者毎に実績数量を集計して記入し提出(郵送等)
【報告期日】6月30日(自治体によっては7月30日)
②産業廃棄物管理表交付等状況報告書(マニフェストの交付実績報告)
【対象】4月1日~翌年3月31までに1枚でも交付した紙マニフェストの産業廃棄物
報告方法および報告期日は収集運搬・処分実績報告と同じです。
なお、電子マニフェストで交付した分の産業廃棄物は電子マニフェストシステム(JWNET)が事業者に代わり報告するため、集計→記入→提出する手間はありません。
参照:公益社団法人 全国産業資源循環連合会|令和5年度 産業廃棄物処理実務者研修会|基礎コース|テキスト||第3章 産業廃棄物管理票(マニフェスト)|2-11 知事等への報告義務
保存の義務(マニフェストの保管)
紙マニフェストは産業廃棄物の委託契約書と同様に紙媒体のまま5年間保存する義務があります。
電子マニフェストの場合は、JWNETが自動的にデータを保存しているため、5年間保存義務がありながらも保管スペースや自社で管理する必要が生じません。
参照:株式会社日本実業出版社 産廃処理の実務が分かる本(第4刷)|5-8 電子マニフェストのメリット・デメリット|電子マニフェストとはどのようなもの?
マニフェストの運用方法を図で解説
マニフェスト運用の流れは大きく分けて6つです。
- マニフェストの交付
- 運搬終了報告
- 処分終了報告
- 最終処分終了報告
- マニフェストの保存(紙マニフェストのみ)
- 帳簿記載(紙マニフェストのみ)
紙でも電子でも基本的な運用方法は同じですが、細かい流れが異なりますのでそれぞれ見ていきましょう。
出典:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)|電子マニフェストとは |マニフェスト制度とは|目的>
紙マニフェストの運用方法
紙マニフェストは全部で7枚の複写式で、産業廃棄物が移動するとともに上から1枚ずつ各事業者が記入していき、自ら保管するマニフェスト以外を各事業者に郵送します。
電子マニフェストの運用方法
電子マニフェストの場合は、それぞれの事業者がJWNETに登録することで交付や回付が行われます。
ただし、廃掃法では廃棄物の流れを示した書類の携帯が義務付けられているため、電子マニフェストを使用する場合は、受渡確認票の携帯が必要です。
参照:公益社団法人 全国産業資源循環連合会|令和5年度 産業廃棄物処理実務者研修会|基礎コース|テキスト|第3章 産業廃棄物管理票(マニフェスト)|3-3 電子マニフェスト運用の流れ
マニフェストの特徴を分かりやすく解説
2種類あるマニフェストは運用方法だけでなく特徴にも違いがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
紙マニフェスト | 電子マニフェスト | |
---|---|---|
交付と帳簿管理 | a)現場にて交付 b)運搬終了、処分終了、最終処分終了報告の都度、紙マニフェストの内容を自社作成の帳簿に入力する |
a)JWNETに登録 b)運搬終了、処分終了、最終処分終了報告の有無を電子メールや一覧表で確認する |
マニフェストの準備 | 各自治体の産業資源循環協会にて購入する ・直行用(7枚綴)100セット 3,000円 |
JWNET登録を行う ・基本料金:26,400円/年 ・使用料 :11円/件 ※1年間の登録件数が1,381件以上の処分業者の場合(収集運搬+処分報告) |
保管 | 5年間、紙媒体で保管する(保管場所の確保、5年経過後の廃棄対応も必要) | JWNET内に自動保管されるため保管対応が不要 |
マニフェスト実績報告 | 自社作成の帳簿等で集計→記入→提出 | JWNETが代わって報告する |
郵送作業 | 排出事業者、運搬業者、処分業者が各自保管するマニフェストを期日までに郵送する | それぞれの事業者がJWNET内に入力すると運搬終了、処分終了、最終処分終了報告がメールで送られる(郵送不要) |
紙マニフェストと電子マニフェストの大きな違いは事務作業に対する労力です。
ある企業では、毎日5時間、1週間で約25時間費やしていたマニフェストの交付や入力業務がJWNETを導入したことにより3時間/日、15時間/週まで減った実績もあります。
また毎年5月~6月は残業しなければ終わらなかった実績報告の集計も電子マニフェスト分の集計が不要となったことから、業務時間内に終わるようになったと言います。
排出事業者、運搬業者、処分業者の3者が加入していなければならないハードルはありますが、業務効率および軽減負担には大変有効です。
参照:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター|電子マニフェストとは|導入のメリット
産業廃棄物管理はシステム導入+自社に合った運用を
産業廃棄物の処分にはマニフェストが必ず必要で、どちらのマニフェストを使うにせよ自社に合った運用方法で適切に管理することが求められます。
しかし、廃棄物に関する事務処理はマニフェスト以外にも契約書、許可証、帳簿管理に請求書の発行など「期限」がある業務が多く、マニフェスト担当者や期限管理をしている事務担当者は日々、業務に追われているのが現実です。
しかしながら、JWNETを導入することで「期限管理」に追われる業務負担を減らすことができます。
また、JWNETと連携し産業廃棄物の数量管理や契約書、許可証の期日管理ができるシステムを併せて活用し紙マニフェスト分の産業廃棄物も一元的に管理すれば業務の効率化も加速させることができます。
JWNET(電子マニフェスト)+廃棄物管理システムの導入が業務効率化への近道だと断言できますので、この機会にぜひ検討してみてください。