発泡スチロールは身近な梱包材として、さまざまなシーンで見かける機会があります。
発泡スチロールの多くは、再生品として生まれ変わっていることを知っていますか?
本記事では発泡スチロールのリサイクルの現状、方法を解説します。
また、発泡スチロールを使ったリサイクル品の例も紹介しますので参考にしてください。
目次
発泡スチロールはリサイクルできる
発泡スチロールはリサイクルされ、食品容器や断熱材など生活のいろいろな場面で役立っています。
国内での発泡スチロールの生産数は毎年10万トン以上使用されており、2023年はリサイクル回収された中で51%が再生品になっています。
発泡スチロールは素材の再利用だけでなく、燃やす時のエネルギーもリサイクルに役立てられる素材です。
一部を除いてほとんどがリサイクル可能な発泡スチロールのため、燃やすゴミに出す前に再利用する手段がないか検討してみましょう。
参照
プラスチックのはてな
発泡スチロールの3つのリサイクル方法
発泡スチロールはリサイクル方法が3つあります。
- マテリアルリサイクル
- ケミカルリサイクル
- サーマルリサイクル
リサイクル方法の違いは、回収する自治体のリサイクル施設の環境や、発泡スチロールの汚れの有無などが関係しています。
ここではリサイクル方法ごとの紹介と、再製品化される種類の違いを紹介します。
マテリアルリサイクル
マテリアルリサイクルは、発泡スチロールを物理的に溶かして再生原料にする方法です。
溶かした発泡スチロールは、再び製品として成型されるるため、環境負荷が少なく資源の消費量を削減できます。
ただし、洗浄された使用済みの発泡スチロールが主な対象です。
- 発泡スチロールを洗浄・乾燥させる
- 圧縮・減容処理(インゴット化)
- ペレット化(粒状の再生樹脂)
- 新たなプラスチック製品へ加工
特に食品トレーは、スーパーのリサイクルボックスで集められ、高品質なトレーへと生まれ変わります。
ほかにも文房具やCDケース、建築資材、断熱材などの軽量で強度が高い特性を活かした製品に活用されています。
ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクルは発泡スチロールを熱や薬品で化学的に分解するリサイクル方法です。
モノマー(スチレン)などの原料に戻すため、汚れがあるものや、他のリサイクルが難しい素材にも対応できるところが特徴です。
- 発泡スチロールを熱分解する
- スチレンモノマーなどの化学原料に変換
- 新たなプラスチックや化学製品に再合成する
マテリアルリサイクルできなかった発泡スチロールも再利用できる点がメリットですが、食品など高い衛生レベルが求められる再生品には使用されません。
合成樹脂、接着剤や塗料、合成ゴムなど、人の体に触れない製品にリサイクルされています。
サーマルリサイクル
サーマルリサイクルは、発泡スチロールを焼却する際に発生する熱エネルギーを利用する方法です。
ごみ発電や熱供給などに活用され、「熱回収」とも呼ばれています。高温焼却処理の専用施設で、焼却時に発生した熱を回収して発電、温水供給に役立てられています。
特に汚れがひどくマテリアル・ケミカルリサイクルが困難な場合でも、有効な処理法です。廃棄物を資源として最大限に活用する方法として導入されていますが、専門施設が必要なため自治体によってはまだ普及が進んでいません。
発泡スチロールを使ったリサイクル製品の例
発泡スチロールのリサイクル製品は、リサイクル方法によってさまざまあります。
ここでは、リサイクル製品の例と特徴を紹介します。
再生発泡スチロール
主な製品例
- 再生食品トレー
- 再生梱包材
- インゴット(再資源化用圧縮ブロック)
使用済みの発泡スチロールを再度発泡スチロールに再生したものを「再生発泡スチロール」と呼びます。
主にもう一度トレーや梱包材として使用される他に、断熱性や軽さを活かして断熱材などの建築資材にも活用されています。
食品トレーのリサイクルでは、特に白色トレーが対象でスーパーマーケットのリサイクルボックスを通じて回収されます。
洗浄・圧縮されたトレーは再びトレーに成型される「トレーtoトレー」の流れが確立しています。
文房具
主な製品例
- 定規
- ファイルやバインダーのパーツ
- 下敷き
- プラスチックケース類
発泡スチロールは文房具にも生まれ変わっています。回収した発泡スチロールは粒状(ペレット)に加工され、プラスチック製の文具に成型して再利用されるのです。
耐久性や軽量性が必要な文房具との相性が良く、いろいろなメーカーが導入しています。
日用品
主な製品例
- 洗剤ボトル
- 小型収納ケース
- 植木鉢
- 玩具や雑貨の一部パーツ
発泡スチロールは、洗剤ボトルなどの日用品にも再利用されています。加工のしやすさと安定した品質が魅力で、ボトルやケースなどの消耗品に活用すると資源を繰り返し使用できるメリットがあります。
また、洗剤ボトルや収納ケースの一部など、比較的目につきにくい場所で発泡スチロールのリサイクル素材が使われているのです。
建築資材
主な製品例
- 断熱パネル
- 床材・壁材の中間層
- 地盤改良材(土木用EPS)
- 畳の芯材
建築業界では、発泡スチロールの軽量性、断熱性を活かしたリサイクル品が活用されています。
特に押出法ポリスチレンフォーム(XPS)に加工されるケースが多く、住宅やビルの断熱材、外壁材などに再利用されています。
発泡スチロールの処分方法
発泡スチロールは軽くてかさばるため、処分に悩む方も多いのではないでしょうか。
しかし、発泡スチロールは正しく処分すれば多くがリサイクルに回され、環境に優しい選択ができます。
ここでは発泡スチロールの主な処分方法を4つ紹介します。住んでいる地域や発泡スチロールの状態に応じて、適した回収方法を選びましょう。
自治体の回収に出す
多くの自治体では、発泡スチロールを「資源ごみ」または「可燃ごみ」として分別しています。自治体によって分類や出し方が異なるため、必ず地域のごみ分別ガイドを確認しましょう。
白く汚れのないトレーなどは、資源ごみとしてリサイクルに出せる可能性が高いです。ただし、汚れているものやカラー付きのものは可燃ごみ扱いになることもあるため、自治体のルールに従ってください。
リサイクルボックスに持ち込む
スーパーマーケットや一部のドラッグストアには、使用済みの発泡スチロール製食品トレーを回収するリサイクルボックスが設置されています。
この方法は、特に白くて清潔なトレーが対象で、汚れつきの状態は回収できません。
「トレーtoトレー」リサイクルとして、再利用されているため、使用後はしっかり洗って乾かしてから持ち込みましょう。
また、食品トレーの捨て方については下記記事で詳しく紹介していますので、こちらの記事もご確認ください。
関連記事:リサイクルできる食品トレーは?種類と回収方法を解説!
クリーンセンターに直接持ち込む
大量の発泡スチロールがある場合は、自治体のクリーンセンター(ごみ処理施設)に直接持ち込む方法があります。
ただし施設によっては事前予約や受付が必要になるため、チェックしておきましょう。
持ち込み方法、手数料の有無なども確認しておくとスムーズです。
大型な発泡スチロールや量によっては、家庭ごみとして処分できる量を超えると事業系ごみ扱いになる可能性もあります。その場合料金も変動するため、問い合わせておくなど処分方法を調べておきましょう。
不用品回収業者に依頼する
引っ越しや大掃除などで大量の発泡スチロールが発生したときは、不用品回収業者に依頼する手段もあります。
持ち出す手間なく処分できるメリットがある一方で、自治体の回収よりも費用がかかる点がデメリットです。
そのため、発泡スチロールの量やコストを比較して判断しましょう。
また発泡スチロール以外の不用品もまとめて処分できるため、分別が面倒な場合や急ぎの際にも便利です。
発泡スチロールの処分方法の注意点
発泡スチロールは再利用できる資源ですが、正しく処分しないとリサイクルできない可能性があります。
そこで、おさえておきたい発泡スチロール処分の注意点を紹介します。
自治体の指示に従って分類する
発泡スチロールが「燃えるごみ」になるか「資源ごみ」になるかは、自治体によって異なります。
例えば、清潔な食品トレーは資源ごみとして回収されますが、汚れたものやカラー付きの素材は可燃ごみに該当する場合もあります。
処分前に必ずお住まいの地域のごみ分別ルールを確認しましょう。
誤った分類で出すと収集されなかったり、リサイクル工程に支障をきたす恐れがあります。
切断する時はクズの飛散に注意
発泡スチロールは大きいままだとかさばるため、自治体によっては指定のサイズまで小さく切る必要になります。
しかし、切断する際には小さなクズが静電気で飛び散りやすく、掃除が大変になるリスクがあるため注意しましょう。
作業は新聞紙やブルーシートを敷いた上で行い、掃除機などでこまめに回収すると安心です。また、マスクの着用や換気もおすすめです。
ダンボールと一緒に古紙に出さない
梱包材としてダンボールの中に発泡スチロールが入っていた場合、別々の素材に分けて資源ごみに出す必要があります。
ついまとめて古紙として出してしまいがちですが、発泡スチロールは一緒にリサイクルできません。かえってリサイクルの妨げになり、回収されない可能性があります。必ず紙部分と発泡スチロールは別々に分別して処分しましょう。
まとめ
発泡スチロールはリサイクル率が高い資源です。しかし、汚れがあるものはそのまま再度発泡スチロールへ製品化できません。
その代わりにペレット化して建築資材に使ったり、燃やす際の熱エネルギーを再利用したりと、複数の方法で有効活用されています。
発泡スチロールを処分する際は、できるだけ食品などの汚れをきれいに洗い、ほかの素材と分類しましょう。
そのうえで自治体の処分方法に従って処分することが、発泡スチロールの有効活用につながります。