今、リサイクル時に発生するエネルギーを有効活用する方法が注目されています。
リサイクル時の熱や河川水などからエネルギーを回収して、発電といった別のエネルギーに変換しています。
本記事ではリサイクルエネルギーの種類や、サーマルリサイクルを解説します。ごみは回収後さらにどうやって分別されているのかも説明するため参考にしてください。
目次
リサイクルエネルギーが新エネルギーとして注目されている
リサイクルエネルギーは、昔から存在する太陽光や風、石油などとはちがい、家庭などから出るごみといった人間が生み出したものからエネルギーを回収する取り組みです。
地球に存在する天然資源は有限で、いつかはなくなってしまうもの。そこで今は世界全体で、新しくエネルギーを生み出す流れが注目されています。
新エネルギーは二酸化炭素の排出がとても少なく、環境にやさしいクリーンエネルギーといわれています。
リサイクルエネルギーの種類
リサイクルエネルギーは、廃棄物や未利用エネルギーを再活用することで、新しいエネルギーを生み出す方法です。リサイクルエネルギーは資源の有効利用と環境負荷の軽減が期待されています。
以下に、代表的なリサイクルエネルギーの種類を詳しく解説します。
家庭事業系ごみ
家庭や事業所から排出される可燃ごみを利用し、エネルギーを生み出す方法です。現在、再生可能エネルギーとしてもっとも広く活用されているリサイクルエネルギーで、廃棄物を焼却する際に発生する熱が主な材料です。
発生する熱を利用して発電や地域暖房に活用します。また、埋め立て処分場で発生するメタンガスを回収して発電する技術も存在します。このような技術は、ごみの削減とエネルギー供給を同時に実現します。
工場の排熱
工場での生産活動で発生する排熱を再利用すると、エネルギーの無駄を減らします。たとえば排熱を利用して蒸気を発生させ、その蒸気で発電を行う「コージェネレーションシステム(熱電併給システム)」が代表的な例です。
また、排熱を直接暖房や冷房に活用して、エネルギー効率を大幅に向上させられるのです。この技術は、工場のエネルギーコスト削減や環境負荷軽減にもつながります。
河川水や下水
河川水や下水には、大量の未利用熱エネルギーが含まれています。この熱を回収して地域暖房や給湯に利用する技術が進んでいます。たとえば下水処理場では、処理過程で発生する熱をエネルギーとして利用可能です。
また、河川水も同様に熱交換システムを導入すれば、再生可能なクリーンエネルギーを供給できるのです。
このようにリサイクルエネルギーは、排出されるごみを無駄にせず最後まで有効活用する取り組みと言えます。
サーマルリサイクルとは?
サーマルリサイクルとは、廃棄物を焼却処理する際に発生する熱エネルギーを回収し、再利用するリサイクル方法です。
この技術は、廃棄物の減量化と同時にエネルギーを有効活用するための手段として注目されています。サーマルリサイクルは特にプラスチックや食品廃棄物、可燃ごみなど、燃焼可能な廃棄物に採用されています。
サーマルリサイクルの具体的な活用例の一つが発電です。発電は廃棄物を焼却する際に発生する熱で蒸気を作り、その蒸気でタービンを回して電気のエネルギーにします。
ほかにも暖房や給湯のエネルギーに再利用するケースもあります。たとえば温水プールのエネルギーにするなど、施設で使われています。
工場や施設に熱エネルギーを供給し、製造工程や空調に活用して石油などの資源の節約に役立てているのです。
リサイクルエネルギーを活用するメリット
リサイクルエネルギーは、廃棄物や未利用のエネルギーを再活用すると、次のようにさまざまなメリットがあります。
今まで消費のみだったエネルギーを有効活用できる
リサイクルエネルギーの最大のメリットは、従来は廃棄されていたエネルギーを有効活用できる点です。
家庭や事業所から排出されるごみを燃焼して発電したり、工場から発生する排熱を再利用したりすると、新たなエネルギーを生み出すことが可能です。
有限である資源を節約し、エネルギーを効率的に利用できます。
新たな資源を消費せずエネルギーを産める
リサイクルエネルギーを活用すると、石油や石炭といった新たな化石燃料を消費せずにエネルギーを生産できます。資源の枯渇を防ぎつつ、化石燃料に依存しない持続可能なエネルギー供給につながるのです。
また、化石燃料を使用しないことで、二酸化炭素の排出量の削減にもつながります。二酸化炭素の排出量が減ることで、地球温暖化対策に役立っているのです。
焼却によってごみの体積を減らせる
ごみを燃焼させてエネルギーを生み出すリサイクルエネルギーは、ごみの体積を減らす効果もあります。焼却によって埋め立て処分が必要なごみの量を大幅に減少させると、最終処分場に置けるごみの容量がアップします。
また、焼却時に発生する熱を利用して発電や地域暖房に活用すると、さらなるエネルギー効率に役立っているのです。
リサイクルエネルギー活用の課題
リサイクルエネルギーは、廃棄物を有効活用し環境負荷を軽減する画期的な技術ですが、普及やスムーズな運用にはいくつかの課題があります。どのような問題が怒りやすいのか、リサイクルエネルギー活用の主な課題を紹介します。
焼却による有害物質の発生
廃棄物を燃焼してエネルギーを生み出す際、ダイオキシンなどの有害物質が発生する可能性があります。
このような有害物質は大気汚染を引き起こし、人や動物の健康に悪影響を及ぼす原因になってしまいます。有害物質を防ぐため焼却施設では高度なフィルターや排ガス処理技術を導入しているものの、完全に抑えることはむずかしい現状です。そのため、有害物質発生をおさえるために、さらなる技術開発が求められています。
二酸化炭素の発生
リサイクルエネルギーの活用過程では、二酸化炭素が発生する場合があります。特にごみ焼却によるエネルギー生成は、化石燃料を使用する時と同様に二酸化炭素を排出するため、地球温暖化の原因につながります。
このため、炭素排出量を最小限に抑える技術の開発や、排出した二酸化炭素を吸収・再利用する技術が求められています。
リサイクルエネルギーでまかなえる量が少ない
現時点でリサイクルエネルギーが供給できる量は、社会全体の需要に対して十分ではありません。
廃棄物や排熱など、利用可能なエネルギー源が限られているため、再生可能エネルギーやほかのエネルギーと組み合わせないと、必要量をまかなえないケースが多くあります。また、リサイクルエネルギーの収集・処理にはコストや手間がかかるため、効率的な運用方法を見つけることも課題になっています。
回収後のごみの分別方法
ごみは捨てる前に家庭で分別しますが、実は焼却場やリサイクルセンターに運んだあともさらに分別が行われています。
ここではごみの種類別での、回収後の分別方法をくわしく見ていきましょう。
可燃ごみ
可燃ごみはごみ収集車によって回収されたのち、清掃工場に持ち込まれます。
持ち込まれたあとは焼却場によって高温で燃やし、できる限り灰にします。この燃やす際に発生するエネルギーを活かして、温水プールを暖めるなど再利用されています。ほかにも燃えカスを道路のアスファルトやコンクリートの材料に使うこともあります。
そして使われない灰は最終的に埋立処分場に運ばれます。
不燃ごみ
不燃ごみはごみ収集車で回収された後、不燃ごみ処理施設に運ばれます。ただし、不燃ごみの中には包丁など取り扱いに注意が必要なものもあるため、人の手によってていねいに仕分けられます。
仕分け後は粉砕し、さらに鉄、ガラス、陶器など素材ごとに分類されます。素材をもとに鉄は鉄製品、ガラスは建材用のガラスとして再利用されます。
粗大ごみ
粗大ごみは自治体の回収を依頼する場合、指定の回収場所と日時までに運び出す必要があります。そのあとに粗大ごみ処理施設に運ばれて、可燃系と不燃系に人の手によって分類されます。
まだ使える状態の粗大ごみは、修理してリユースするケースもあります。再利用がむずかしい粗大ごみの場合、鉄は磁石で取り出してさらにガラスなどほかのパーツを取り出します。
再利用できるパーツをとったら、木材など燃やせる部分は焼却して、燃やせないものは最終処分場で埋め立てされます。
故紙
故紙は専門の回収業者によって回収後に、分別されたのちに圧縮しブロック状に梱包されます。その後に製紙メーカーに送ったうえで、溶かしたあとにインク抜きをして、白い状態に近づけます。
最後に紙すきをして再生紙に作り替えるのです。新聞紙やノート、飲料用の紙パック、ダンボールなど、一度使用した紙も再び紙として生まれ変われば、新たに森林伐採をして自然環境を守ることにつながります。
ペットボトル・プラスチック
ペットボトルなどのプラスチック製品は、回収後に改めて洗浄して清潔な状態に戻します。
そのうえでペットボトルを小さなペレット状に小さく分解し、再びプラスチックの資材として再利用されています。
ペットボトルをそのままペットボトルに作り替えることもあれば、別のプラスチック製品や衣類に生まれ変わる場合もあります。
再利用できないペットボトルは、最終的に焼却処分されますがその際に発生する熱のエネルギーを再利用するなど、できる限り資源を無駄にしない取り組みが続けられています。
缶
アルミ缶はアルミニウムを製造する工場にて、高温で溶かされます。その後再度アルミ缶になるケースもあれば、アルミ板などの資材に作り替えられることもあります。
そしてスチール缶はまとめて圧縮されて、鉄クラップになります。アルミ缶と同様に高温で溶かされて、鉄鋼製品としてリサイクルされています。
まとめ
ごみの焼却やリサイクルの際に発生するエネルギーは、リサイクルエネルギーとして今注目を集めています。
燃料を加えずとも、リサイクル時のエネルギーを使うため環境に優しく、循環型社会に役立っています。
もしごみを捨てる際には、正しく分別ができているか、リサイクルできる資源ではないかチェックしてみましょう。
また、再利用、再製品化された商品を使用することも、環境にやさしい暮らしにつながります。