何気なくリサイクルに出しているペットボトルが、どのような姿に変わっているのか知っていますか?ペットボトルは日本で8割以上がリサイクルされ、私たちの生活に欠かせない物へと生まれ変わっているのです。
本記事ではペットボトルがリサイクルによって何に変わるのか、そしてペットボトルのリサイクル率を解説します。ペットボトルのリサイクルを手助けするために、身近にできる取り組みのポイントもまとめているため、参考にしてください。
目次
ペットボトルはリサイクルで何に変わる?
ペットボトルは資源であり、リサイクルで有効活用することは環境への負荷の軽減につながります。
SDGsが注目される中、日本だけにとどまらず世界的にペットボトルをゴミにせず、資源にする流れは年々広がっています。以下で、リサイクルされたペットボトルがどのような製品に変わるか、具体例を紹介します。
食品容器:トレーやパック
リサイクルされたペットボトルは、食品トレーやパックとして再利用されることが多いです。これはペットボトルが軽量、かつ透明性が高いため、食品用のパックに適しているからです。
リサイクルによって新たに作られたトレーやパックは、スーパーでの惣菜や野菜などのパッケージとして使用されるなど、使い捨ての容器に繰り返し使用されています。
食品容器として再生利用することで、プラスチックを新たに製造する際の石油の使用を抑えられる分、資源循環の促進につながります。
繊維:スーツやTシャツ
リサイクルされたペットボトルは、繊維化されてスーツやTシャツ、バッグの素材になっています。リサイクルされたポリエステル繊維は、速乾性や耐久性に優れている特徴があります。
主に、スポーツウェアや日常着として重宝されています。なお、ペットボトル由来の繊維製品は、環境に配慮したファッションアイテムとして注目され、今では新しく洋服を買うのなら、リサイクル素材の商品を選ぶ人も増えてきました。このようなリサイクル製品をあえて選ぶことは、サステナブルな消費の一環とも言えます。
成型品:ボトルや定規
ペットボトルは、再びボトルや文房具の定規などの成型品としても生まれ変わります。リサイクルしたペットボトルは「リサイクルペット(rPET)」と表記されています。
リサイクルボトルは、飲料や洗剤の容器として普及しています。ほかにも耐久性が高く軽量な性質を活かして、定規や文房具、家庭用品などの製品にも活用されています。
飲料用のペットボトルのリサイクルは、衛生面での問題をクリアする必要があります。すべてのペットボトルが、再びペットボトルに作り替えられるとは限りません。
できるだけペットボトルを汚さず、スムーズなリサイクルができるよう分別を心がけることが、リサイクル率の向上に役立ちます。
建築材:ボード
リサイクルペットボトルは、建築用のボードとしても活用されます。ペットボトルを再利用したボードは、軽量でありながらも強度があるため、建材やインテリア材として利用されています。
主に店舗や住宅の内装材としても人気です。また耐久性や断熱性が評価され、環境に優しい素材としても注目されています。建築用ボードとして再利用することは、大量の資材が必要となる建築分野におけるサステナブルな素材の選択肢が増え、循環型社会に向けた重要な一歩につながります。
日本と世界のペットボトルリサイクル率
日本と世界のペットボトルのリサイクル率は、どちらが多いのでしょうか?
ペットボトルがどの程度リサイクルされ、生活に再び活かされているのか、具体的な数字を紹介します。
日本のペットボトルリサイクル率は86.9%
日本のペットボトルリサイクル率は、2022年度で86.9%です。なおペットボトルの販売数は輸入製品も含めて、2022年度は254億本です。なお、現在はペットボトル容器そのものの軽量化を進めており、本数に対してのペットボトルの重量は減少傾向にあります。
ペットボトルは飲料水や調味料など、生活に欠かせない物に多く使われています。ペットボトルの使用料を減らすことは困難でも、ペットボトル1本あたりの軽量化とリサイクル率を高めることで、新たな資源の使用をおさえているのです。
世界のペットボトルリサイクル率は84.8%
世界のペットボトルリサイクル率の平均は84.8%で、日本の86.9%は世界平均よりも高いことがわかります。
日本では2022年度時点で、ペットボトルリサイクル率85%以上の目標を掲げていました。この目標を順調に達成し、リサイクル推進に力を入れています。そのままペットボトルとして再利用できない品質でも、ほかの製品に作り替えるなどして、できるだけペットボトルやプラスチックを無駄にしない心掛けが、数字として現れているのです。
このペットボトルリサイクル率は、一人ひとりの心掛けでさらに高めることも可能です。そのためにはペットボトルのリサイクル方法を知り、リサイクルしやすい処分方法を心掛けましょう。
ペットボトルは2種類のリサイクル方法がある
ペットボトルは2種類のリサイクル方法があり、リサイクル後の製品の種類も異なります。
2種類のリサイクル方法の違いと、どのような製品に生まれ変わるのか解説します。
ボトルtoボトル(水平リサイクル)
ボトルtoボトルは、飲料や調味料などの食品用のペットボトルを原料化して、再びペットボトルにする方法です。別名「水平リサイクル」と呼ばれており、再度ペットボトルに使えるため新たな資源の使用量を減らせます。
このボトルtoボトルは、「ケミカルリサイクル」「メカニカルリサイクル」に分けられています。
・ケミカルリサイクル:化学分解によって新しいPET樹脂を作る
・メカニカルリサイクル:異物除去や高温による処理でペレット化したうえでペットボトルにする
どちらもペットボトルをいったんフレーク化する点は同様ですが、その後にペットボトルに再製品化するまでの製造工程が異なります。
新しく石油原料を使って製造するよりも、1本あたりのCO2を削減でき、原油を使わない分環境保全につながります。ただし、ボトルtoボトルは一定以上の品質が保証されなければ、利用できないリサイクル方法です。
これは再製品化したペットボトルに、ゴミなどの異物があると飲料用のボトルとして衛生面に問題が出てしまうためです。はじめはボトルtoボトルでリサイクルできていたペットボトルも、品質劣化が進めばカスケードリサイクルされます。
カスケードリサイクル
カスケードリサイクルとは、元の品質に戻らないと判断されたペットボトルを低い品質で作るか、別製品にする方法です。
ペットボトルはフレーク化されて、トレイや下敷きなどの文房具に作り替えられています。ほかにも、衣類やフィルムといった、さまざまなアイテムに作り替えられています。ペットボトルを再利用した際に、一定基準を満たしている場合、製品に「PETボトルリサイクル推奨マーク」がついていることがあります。
カスケードリサイクルによる、再製品化される製品の種類は年々増加しています。今では何気なく使っているプラスチック用品、衣類の多くがリサイクルされた資源を使っており、環境に優しい暮らしが可能です。
ペットボトルをリサイクルする3つのメリット
ペットボトルのリサイクルには、環境保護や資源の有効活用に多くのメリットがあります。ゴミの分別とリサイクルを行い、地球への負荷を減らしましょう。
ここでは、ペットボトルのリサイクルで得られる3つのメリットについて詳しく解説します。
可燃ゴミを減らして二酸化炭素を削減
ペットボトルをリサイクルすると可燃ゴミの量が減り、焼却によって排出される二酸化炭素も削減されます。また、新たにペットボトルを製造するには、海外から原油を運ぶ経済的な負担、燃料の使用によるCO2排出などの問題があります。
今あるペットボトルをリサイクルに回せば、焼却処分による温室効果ガスの削減につながるため、気候変動への影響を抑える取り組みになります。
ほかの資源を使わず繊維や容器を生み出せる
リサイクルされたペットボトルは、繊維素材や新しい容器に再利用されるため、新たに資源を採掘する量が減少します。
リサイクルペットボトルは、主に衣料用繊維や梱包材として生まれ変わり、生活用品にも広く活用されています。このような資源の循環は、環境への負担を軽減し、限りある資源の枯渇を防ぐために欠かせません。
世界全体でペットボトルをリサイクルに出すという習慣が広まれば、資源の消費を抑えて持続可能な社会の構築に役立つのです。
ゴミの埋立地に持ち込む量が減る
ペットボトルのリサイクルは、埋立地に持ち込むゴミの量を減らせます。埋立地の容量は限られており、ゴミが増えると新たな処理地の確保が必要になってしまいます。
そこで、リサイクルを行うことでこの課題を軽減できます。特に、プラスチック製品の埋立が増えると土壌や地下水の汚染リスクも増加します。かつて日本は、2017年時点で、50%以上ものプラスチックゴミを輸出していました。
プラスチックゴミはリサイクルされていましたが、汚れや分別されていないものは、埋め立てられたり川に流されたりといった、環境汚染の原因になっていたのです。2017年からプラスチックの輸出を禁止する国が増え、日本でも自国で処分するためにリサイクル化が一気に進んだ背景があります。
ペットボトルリサイクルの2つの課題
ペットボトルのリサイクルは環境に良い影響を与える一方で、課題も存在します。
リサイクルの工程次第では、リサイクルが難しくなったり、コストがかかったりするケースもあるのです。ここでは、ペットボトルリサイクルにおける2つのデメリットについて解説します。
ペットボトルの劣化が進みやすい
ペットボトルはリサイクルを繰り返すことで、素材の劣化が進みやすい特性があります。リサイクルの際、高温での処理が必要となるため、繰り返し再製品化することは困難です。
特に飲料水などの食品を扱うペットボトルは、衛生面でも問題があります。ボトルtoボトルのリサイクルを何度も行えない代わりに、今ではプラスチック素材として別の製品に作り替えられるカスケードリサイクルが進んでいます。
それでも、中にはリサイクルが困難な品質のペットボトル、分別されていないなどの状況が多ければ、新しいプラスチックの製造が必要になってしまうのです。
インフラ未整備のエリアはリサイクルコストがかかる
リサイクルインフラが整っていない地域では、ペットボトルのリサイクルに高いコストがかかることが課題です。リサイクル施設の設備投資や運搬のコストがかかり、効率的なリサイクルが難しい場合もあります。また、インフラ不足によりリサイクルできないエリアでは、ペットボトルがゴミとして埋立地に送られることもめずらしくありません。
ペットボトルのリサイクルを促進するには、各地域でのインフラ整備が求められ、そのための予算や支援も必要です。
ペットボトルのリサイクルで身近にできる取り組み4選
ペットボトルをリサイクルする際は、ただ処分するだけでなくリサイクルしやすい状態を心掛けましょう。
身近にできるペットボトルのリサイクルに関して、心掛けたい取り組みを4つ紹介します。
キャップとラベルを外す
ペットボトルのキャップとラベルは、それぞれ別の方法でリサイクルされています。捨てる際には、ペットボトル本体のみにして、それぞれの方法でリサイクルに出しましょう。
ちなみに、外したキャップは地域や店舗で行っている「エコキャップ運動」に寄付できる場合もあります。キャップやラベルを外すことは簡単な作業ですが、つい面倒でそのまま捨てている人もいます。このラベルとキャップを外すひと手間が、リサイクルの質を向上させる大切な取り組みなのです。
リサイクルボックスに出す
ペットボトルは自治体の回収場所やスーパー、コンビニのリサイクルボックスに出しましょう。専用のリサイクルボックスに入れることで、ペットボトルが確実にリサイクルルートに乗り、資源として再利用されやすくなります。
また、リサイクルボックスが利用できない場合は、自治体の指示に従って分別し回収に出してください。ペットボトルの
リサイクル率の向上に貢献できます。手軽にリサイクルボックスを利用することで、身近に資源の循環を支えることが可能です。
中を水できれいにすすぐ
ペットボトルをリサイクルに出す際は、中を水で軽くすすいできれいにしましょう。中身が残ったままだとリサイクル工場での処理が難しくなり、ボトルが汚れていると再生材の品質が低下してしまいます。
水ですすぐだけで汚れを落とせるため、ひと手間かけてペットボトルをきれいにしてから処分することを習慣化しましょう。
リサイクルボックスに他のゴミを入れない
リサイクルボックスには、ペットボトル以外のゴミを入れないことも重要です。混ざってしまうとリサイクル工程で分別が難しくなり、リサイクル率が下がる原因です。特に食品の残りや紙などが混ざってしまうと、リサイクル工場での分別の負担も増えてしまいます。
必ず手近なところにゴミ箱がない場面でも、リサイクルボックスにむやみに捨てないよう注意しましょう。
まとめ
ペットボトルはリサイクル率が年々上昇し、大切な資源を守ることにつながっています。中でもペットボトルは、そのままペットボトルに再利用されるだけでなく、衣類や文房具などの生活用品にも幅広く再製品化されています。
何気なく使っているペットボトルの処分方法を見直すと、地球全体の環境保全につながります。ぜひペットボトルはきれいにしたうえで、リサイクルに出す習慣を身につけましょう。